タコ社長のいない印刷工場は、超絶ブラック企業だった。
「男はつらいよ」が好きだ。
数年前、寅さんが持っているトランクを模したケースに納められた20万円の全巻ボックスセットを、本気で購入しようかと死ぬ程迷ったこともある。(結局、購入はしなかったが、今も少し後悔している)
もちろん、リアルタイムで見ていた世代ではないので後追いなのだが、暖かく懐かしい風景にほっこりし、なおかつ登場人物が全員善人なので安心してスーパーニコニコの2時間を過ごせる「男はつらいよ」が大好きなのである。
そんなわけで、東京都内の印刷工場と聞くと、タコ社長と前田吟扮する博が働く、ほのぼのした下町のひなびた職場を真っ先に連想してしまうのだが、それとは全く真逆の超絶ブラックな印刷会社が話題となっている。
地獄の365日連続勤務
問題となっている株式会社アコは、元従業員の男性に1日の休みもなく365日連続で勤務させ、一日当たりの平均残業時間は7時間にも及んだという。しかも残業代は全く支払われていないとのこと。
元従業員の男性は2006年に入社、もともと6人体制だった店舗だが、退職者が相次ぎ2010年には男性1人で全ての業務を行うことになった。
家に帰れない日が続き、風呂は銭湯で2〜3日に1回、職場には仮眠する場所もないので、机に突っ伏して寝ていたという。
男性は2014年に二度も鍛錬自殺を試みて失敗し、その後、鬱であると診断され労災の認定を受け、会社を退職。
会社と社長を相手に慰謝料などおよそ1150万円の支払いを求める裁判を起こした。
確実に利益を上げたいなら、まず従業員の労働環境を整備すること
私も社労士という仕事柄、ブラックな会社の話はよく耳にするが、ここまでブラックなのもめずらしい。
そうなる前になぜ退職しなかったのか、という疑問もあると思うが、実際このような殺人的な忙しさの中にいると、人間というものは自分で冷静にものを考えることが出来なくなってしまうものだ。ある種の洗脳といってもいいだろう。
よく誤解されるのだが、
「そういうブラック企業に入れ知恵してんのが、お前らクソ社労士だろうが!!」
と思われている人も多いと思う。まあ、確かにそういう社労士もわずかながら存在することも否定しないが、ほとんどの社労士は、従業員が会社の発展を担っているという、当たり前のことをきちんと理解し、いかに従業員が安心して働ける職場にするかということに心血を注いでいる。
僕も、まず社長と話をし、
「従業員なんてただのコマや!大切なんは、どれだけ金儲けができるかやでぇ!!」
というナニワ金融道社長の場合、仕事は引き受けないようにしている。
まあ、そんなわけで僕の顧問先の社長さん達は、ありがたいことに皆さん従業員思いの社長さんばかりで、とても仕事がしやすい。(と、すこし媚びを売るでヤンス)
また、実際に従業員の労働環境が良くなると、従業員のモチベーションや会社に対する信頼心が向上し、その会社の業績は確実に上昇している。
ブラック企業に未来はない
目先の利益を求めて従業員を酷使したところで、長い目で見れば会社にとってはデメリットしかないのだが、
「んなもん、ウチみたいな零細企業で従業員の待遇良くしたら食って行けへんわ!!」
という思考を捨てきれない社長がまだまだ多いのも事実だ。
従業員への投資が、会社を大きくさせる為には一番の近道なのだが、広告宣伝費にはバンバン経費を投入する企業でも、従業員の人件費をケチっているところが多いのが、僕には理解出来ない。
しかし、ブラック企業に対する風当たりは日増しに強くなっている。
どんな大手の企業でも、一度「ブラック」の烙印を押されてしまうと、そこからのイメージ回復は非常に難しい。それは某居酒屋や牛丼チェーンを見ても明らかだろう。
それにしても、今回問題となった印刷会社。グーグルのトレンドワードにも上がっているが、「株式会社アコ」とネット検索すると、全然別の同名の会社がヒットする。
この同名の会社にとっては、とんでもなく迷惑な話だろうなと、少し心配。
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