社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

男性の育休取得に助成金。男性の育休を根付かせる呼び水になるか

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厚生労働省は、男性従業員の育児休暇を奨励する企業への助成金を新設することを決定した。中小企業に男性従業員の育休を根付かせる呼び水にしたい考え。

助成金の大まかな概要としては、配偶者の出産後8週間以内に、男性従業員が5日以上の育休を取得した場合、1人目については30万円、2〜5人目については15万円を企業に支払うというもの。6人目以降についての支給はない。

つまり、5人の男性従業員が育休を取得した場合、90万円受給可能となる。

育休時に無給でもいいのか、それとも有給休暇とは別に、賃金の支払いが必要条件となるのか等、細かな概要はまだわからないが、出来る限り企業と従業員にとって利用しやすい条件にして欲しいと思う。

 

 

ネックとなるのは数日の育児休業に対する育児休業給付金支給申請の手間

現在、育児休業期間中の給料について、無給とするか有給とするかは会社が自由に決めてよいことになっており、まあ無給としている企業がほとんどである。

となると、男性従業員が育休を取った場合、その期間は無給となってしまうのだが、これは男性の収入が家計を支えている場合、相当なダメージだろう。

ただ、育児休業期間中については雇用保険の被保険者であれば『育児休業給付金』として、雇用保険から休業1日につき、給料を日割した額のおよそ6割程度を受け取ることが出来る。

しかし、働かなくても給料の6割程度が貰えるとはいえ、生活が苦しくなるのは一緒である。一家を支える大黒柱が、そう何ヶ月も育休をとるわけにもいかないだろう。

また、会社としても助成金は貰いたいが、だからといって男性従業員に何ヶ月も育休を取られるのを良しとはしないだろう。

結局、助成金受給要件の最低日数5日〜10日程度の育休支給で落ち着くと思われる。

なお、その休業期間中について無給であれば、前述の『育児休業給付金』を申請することになるが、これは会社が従業員に代行して行う必要がある。

ただ、この申請。提出しないといけない書類が沢山あり、結構やっかいなのである。

女性従業員の育休取得時のように、1年近く育休を取得する場合であればいいのだが、たかだか数日の育休の度にこの申請を行うのは、中小の事業主にとっては、かなりの負担となる。(もちろん社労士を雇っていれば、すべて社労士が代行するので問題ないのだが)

 

男性の育休取得率を上げるためにも、条件は緩くして欲しいが。。。

そこで、企業および従業員どちらにとってもメリットがあるのは、有給休暇を育休として消化する、という方法だが、おそらくこれは受給要件としては認められないだろう。

会社として利用しやすい助成金であれば、従業員にも

「おー、どんどん育休とってや!うちもそれで国からお金が貰えるんやから!」

と推奨でき、従業員としても

「まあ、会社が取れって言うんやったら取ろうかな。今までは会社にも同僚にも迷惑がかかるから育休取りたくても取れんかったけど、俺が育休取ることで、会社も儲かるんなら問題ないよな!」

と、気兼ねなく育休を取得できるだろう。

男性の育児参加がしやすい社会を作るきっかけとして、とても良い助成金制度なので、ぜひ条件を緩くして、多くの企業が利用しやすい制度にして欲しいと思う。

 

5訂版 雇用関係助成金申請・手続マニュアル

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