伊集院光さんがラジオで話していた、とてもいい話。
先日、伊集院光さんがラジオで話されていたエピソードが、とても良かったので紹介したい。
伊集院さんのテレビ番組を担当しているプロデューサーで、T氏という人がいるのだが、この人がまあ、インチキで、とにかくその場しのぎのデマカセが多いのだという。
ただ、やはりテレビプロデューサーと言うだけあって、仕事も忙しく、家に帰るのはいつも深夜である。
また、このT氏には小学校の低学年になる可愛い娘さんがいる。
ある日、いつものように遅くに家に帰ると、どうも奥さんの機嫌が悪い。
普段は、遅く帰ったからといって機嫌を損ねるような奥さんでもないため、理由を尋ねると、
「だって、今日はあなたの誕生日じゃないの!」
そう言われて気がついた。
「ああ、そうか。今日は俺の誕生日か。料理を作ってくれていたのに遅くなってスマン。」
「料理なんて別にどうでもいいのよ。でも、娘があなたにプレゼントを渡すっていって、ずっとあなたの帰りを待ってたのよ!」
聞けば、娘は自分のお小遣いを貯めて買ったプレゼントを父親に渡したくて、ずっと待っていたのだが、さすがに眠気に勝てず寝てしまったという。
そのプレゼントであるが、娘は父親がスターウォーズの大ファンであり、その中でも特に、ハリソン・フォード演じるハン・ソロが乗る『ミレニアム・ファルコン号』が大好きなことを知っており、母親と買い物に行った際など、常に自分のお小遣いでも買える『ミレニアム・ファルコン号』のグッズを探し回っていたのだという。
しかし、小学校低学年の月のお小遣いなど、数百円である。一方、スターウォーズ関連の商品はどれも高額で、とてもじゃないが手が出ない。
そこで母親がお金を出してあげようとしても、娘はどうしても自分のお小遣いだけで父親にプレゼントを買ってあげたいと言う。
自分のお小遣いでも買えるプレゼントを探しまわったあげく、遂に娘は本屋で素晴らしい商品を見つける。
それが、デアゴスティーニが発売する『週刊ミレニアム・ファルコン』である。
なんと499円で、精巧なミレニアム・ファルコンの模型が付録についてくるというではないか! これなら何とか自分でも買うことが出来る。
喜んだ娘は、早速その本を購入し、自分で丁寧にラッピングし、リボンをかけ、父親の喜ぶ顔を想像しながら、楽しみに父親の帰りを待っていたというわけである。
しかし、皆さんお分かりの通り、デアゴスティーニの商品は、完成までに膨大な時間と、お金がかかる。このミレニアム・ファルコン号も、最終型にするには20万円もかかるのだ。しかし娘は幼すぎて、それがわかっていない。この本一号だけで、表紙に描かれているような立派なミレニアム・ファルコンが完成すると思っている。
以上の話を、奥さんから聞き、
「娘がそのことを知ったら、がっかりするじゃないか!どうしてお前が止めないんだ!」
「そんなこと言ったって、しょうがないじゃない!」
などと言い争っていると、その声で目を覚ました娘がリビングに入って来た。
「あー。パパおかえりなさい!お誕生日おめでとう!これプレゼントだよ。ねえ、開けてみて!!」
と無邪気に笑う娘の前で、プレゼントを開けないという選択肢はない。
「おお!ありがとう!!一体何が入っているのかな??」
と、何も知らないフリをしてラッピングを開ける父親。
「ミレニアム・ファルコンの雑誌じゃないか!!嬉しいなあ!ありがとう!!」
と、そこでなんとか食い止めようとする父親であったが、
「ねえ、その雑誌ね。ミレニアム・ファルコンのおもちゃが付録についてるんだよ。開けてみて!」
と屈託のない笑顔でせがむ娘。
「・・・え、そうなの? あ、うん。」
腹をくくった父親が、雑誌を開けたところ、出て来たのはミレニアム・ファルコンのコクピットの計器部分の部品のみ。
「え!? なんで。。。」
と絶句する娘に、父親は本当のことを伝える。
「あのね、これはね、毎月こういった部品が少しずつ付録についてきて、組み立てていくものなんだよ。」
父親の言葉に、みるみる娘の顔色が曇っていく。
「私、もう、お小遣いいらない!これから毎月完成するまで、これを買う。」
さすがに、それは駄目だと言っても、娘は聞かない。
追いつめられた父親だが、ここで日頃テレビマンとして鍛えた彼のインチキ力が爆発する。
「パパはね、ミレニアム・ファルコンのコクピットのこの部分だけが大好きで、それ以外は大嫌いなんだよ!!」
「ミレニアム・ファルコンの外側は、大っ嫌いで本当は見たくもないんだけど、コクピットのこの部分が大好き過ぎて、仕方なくミレニアム・ファルコン全体を買っていたんだよ。」
「いやー、嬉しいなあ。遂にパパが探し求めていた商品が出たんだなあ。これで、大っ嫌いなミレニアム・ファルコンの外側を見ないで、この部分だけを眺め続けることができるよ!」
と愛する娘を傷つけまいと、インチキパワーを炸裂させる。
「本当に?パパ。」
「もちろん、本当さ!」
「そうなんだ、パパは本当はミレニアム・ファルコンの外側は大っ嫌いだったんだね!」
娘の顔がパッと明るく輝く。
「その通りさ!」
もうどうにでもなれと、開き直ったインチキプロデューサーに怖いものなどない。
そして、娘にもらったミレニアム・ファルコンのコクピットの一部分は、キーホルダーに加工されて、プロデューサーはいつも大事に持っているとのこと。
可笑しくて、ほっこりさせられる、とてもいい話であった。
スターウォーズミレニアム・ファルコン全国版(1) 2016年 1/26 号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: デアゴスティーニ・ジャパン
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