社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

最低賃金が18円上昇。たかが18円だが中小企業にとっては死活問題。

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厚生労働省の中央最低賃金審査議会の小委員会は29日、2015年度の最低賃金を全国平均で時給18円引き上げる目安を決定しました。

これは、現在の決め方になった02年度以降、最大の引き上げ幅となります。

社労士の立場としては、

「えらい、思い切ったことしてくれたなー」

と思ったのですが、世間の皆様の評価は、

「18円程度増えたところで、たかが知れている」

「もっと、一気に1000円くらいまで上げろ!」

「ショボい。。。」

と、意外にも批判的な意見が多いようです。

 

 

中小零細企業にとっては死活問題

まあ確かに、個人の立場から見れば、時給が18円上がったところで、多くても月3000円程度の賃金上昇なわけですから、ショボいと言えば、そうに違いありません。

ただ、ここはあえて

「企業の犬!クソ社労士氏ね!!」

と批判されることを覚悟で言わせてもらうと、多くの中小零細企業にとって、現在の状況で、この最低賃金18円上昇というのは、非常に厄介な問題です。

アベノミクスで給料がアップ!景気回復じゃあ!!などと沸いているのは、一部の大手企業と、経済新聞のみです。

ほとんどの中小企業は、アベノミクスによる恩恵を受けていないばかりか、求人の多くが、より高い給料を出せる大手企業に流れ、人材難であえいでるのが現状です。

たかが、18円の上昇。されど、従業員が30人の中小企業だと、年間にして100万円超の人件費の上昇になります。(もちろん、従業員全員が最低賃金で働いてるわけではありませんので、この計算は少々強引ですが、パートさんなどの時給をアップさせると、その他の従業員の基本給も上げるべきですので、従業員全員の時給が一律に18円上がると仮定します。)

上昇した人件費を確保し、今まで通りの利益を保つには、年間100万円の売上高アップが必要ですが、中小企業で年間100万円の売上高アップというのは、なかなか簡単ではありません。

ヘタをすると給料が払えず、倒産してしまう中小零細企業が大量に出てくるかも知れません。

 

労働者にも、問題が波及する可能性も

ただ、皆さんにとっては

「中小企業が倒産しても、高い給料で大手が雇ってくれるから問題ナッシング!」

といった感じでしょうか。

確かに、現在は求人は売り手市場なので、より良い条件の会社が選び放題かも知れません。

ただ、日本の経済の屋台骨を支える中小零細企業の大量倒産は、ストレートに日本の経済に悪影響を及ぼします。

そうなれば、どうなるか?

大手企業は、以前のように無慈悲な大量リストラを再び実施するでしょう。

そうなれば、リストラされた労働者の受け皿となるべき中小企業の数は減少していますので、町は失業者であふれ、日本は暗黒時代へ真っ逆さま。。。ということも考えられるのです。

もちろん、これは極端な例かも知れません。

ただ、実質的な中身の伴わない経済成長の中で、所得増と消費拡大を目的に、強引に行う賃上げは、かなりの劇薬だということを理解しておいて下さい。

たかが18円、されど18円なのです。

また、適正な賃金で日本人を雇用出来なくなった企業が、違法に安い賃金と劣悪な待遇で外国人労働者を働かせるといった問題が増える可能性もあります。

ただ、政府の思惑通り、労働者の所得が増えることで国内消費も増え、景気も上昇、中小企業も潤う、という好循環が生まれれば、それが一番ですけどね!

まあ、言ってみれば今は、労働者の所得が増え、消費増の好循環が生まれるのが先か、中小零細企業の体力が尽きるのが先かのチキンレースをしているようなものです。

 

とにかく、企業と労働者は表裏一体ですので、どちらかが得をして、どちらが損をするという関係性では、いつしか破綻をきたします。

お互いの信頼関係がきちんと築けている会社は、今後ますます業績もあがり、従業員さんにも最低賃金など気にすることのない程、高い賃金を支払ってあげることが出来るでしょう。

私も社労士として、企業と従業員さんの橋渡し役になれるよう、ますます頑張らなければと思います。

 

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