社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

【1分でわかる】イラン核合意。『歴史的成果』か、それとも『歴史的大失策』か

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7月14日、欧米など6カ国とイランの間で、イランの核開発を少なくとも10年にわたり凍結する合意がなされました。この対価として、今までイランに実施されてきた経済制裁が順次解除されることとなります。

日本の新聞各社は、『中東の核拡散を食い止め、安定を取り戻すための歴史的な一歩である』と報道し、それを見ている我々も、

「ほうほう、確かにこりゃ、平和につながる良いことだわー」

と素直に納得して、「今晩なにか面白そうなテレビやるかなー」とそのまま、記事をスルーしてテレビ欄に目を移しがちですが、どうやら、そう単純でもないようです。

世界に目を向けてみると、今回の合意で、中東の不安はさらに広がると主張している人達も、実はたくさんいるんですね。

「え!?何でイランの核兵器開発凍結で、中東の不安がさらに高まるのさ!もう、訳わかんないよ!!」

と頭が混乱してしまいますが、では今回は、この問題を見ていきましょう。

 

 

中東の覇権を争う、『三国志』

最初に、中東地域の国々について整理していきましょう。

まず、中東の二強『サウジアラビア』と『イラン』。この二国はとにかく仲が悪い。

互いに中東地域での中心国になりたくて、何かに付けて対立しています。

またアメリカと、この二国との関係ですが、『サウジアラビア』とアメリカは同盟国であり、友好関係にあります。

一方、『イラン』とアメリカは過去、石油の利権を巡りアメリカが裏で手を引いて、自分たちに都合の良い政権をイランに樹立させたものの、その後、革命によりその政権が倒され、自分たちにとって不利なイスラム教政権が樹立されたことや、その後のイラン・イラク戦争では、アメリカがイラクの肩をもったことを背景に、すごく仲が悪い。

また、2002年にイランに秘密の核施設があることが判明してから、その対立はさらに激しくなっていました。

イランはこの核施設について

「いやいや、俺たち別に核兵器を作るつもりなんてないよ。原発や、がん治療に必要だから核施設を作ってるだけだしww」

と平和利用が目的であることを主張しますが、アメリカは

「そんなもん信用できるか!お前ら絶対、核兵器作るつもりだろ!!」

と、核施設の撤廃を要求します。しかしイランはそれを無視し続けてきました。

 

さて、ここで中東にはサウジアラビアとイランの他に、もう一国、中東の覇権を狙う国があります。それがユダヤ人国家である『イスラエル』。

実はこのイスラエルも核を保有していますが、イスラエルの核保有についてはアメリカはスルーしています。

その理由として、イスラエルとアメリカが同盟関係にあること、イスラエルと関係の強い権力者達が、アメリカ政府に大きな影響力を持っていることなどが挙げられます。

『サウジアラビア』と『イラン』、それに『イスラエル』を加えた三国が、まるで『三国志』のように中東の覇権を争っているのです。

では、中東地域の複雑な状況をさらに見ていきましょう。

 

イランとアメリカ、それぞれの弱みと思惑

なぜ、これだけ対立していたアメリカとイランが、急に和解に向けて動き出したのか。

それには、皆さん今年に入って嫌という程、名前を聞いたISIS(イスラム国)の問題があります。

このISIS、まあ、とにかく過激で、触るものみな傷つけるジャックナイフなわけです。

ISISの攻撃対象は、基本的に自分たち以外の全ての国なのですが、今のところその矛先は、もっぱら、『イラン』とその同盟国である『イラク』と『シリア』に向いています。

イラクといえば、9.11の同時多発テロなどをきっかけに、アメリカとの間で巻き起こったイラク戦争で、アメリカに敗北し、当時のイラク軍は解体。兵士達は新たにアメリカ主導で組織されたイラク軍に加わります。

アメリカ政府は、新イラク軍に対し、戦車や戦闘機や武器などを提供し支援してきました。

ただ、この新イラク軍が弱い。。。

イラク兵としてのプライドを失った兵士達は、25万人と圧倒的に数で勝っていたにもかかわらず、わずか1000人のISISに敗北します。

さあ、これに頭を抱えたのがアメリカ。

やりたい放題しているISISを、なんとか撃退したいが、自分たちが支援しているイラク軍が激弱で話にならない。

しかし、アメリカ自体の国力も低下しているので、自国の軍を、そうそう中東に集中させるわけにもいかない。どうするか。

そこで、『イラク』と『シリア』の親分格である『イラン』と手を結び、ISISに対する共同戦線を張ろうとしたわけです。

またイランにとっても、核開発問題を理由に各国から受けている経済制裁により、自国の経済は非常に厳しい状況に陥ってました。

そこで、両国の利害関係が一致し、今回の合意となったわけです。

 

今回の合意が、さらなる紛争の種になる可能性も

では、今回の合意がなぜ、中東のさらなる紛争の種になる可能性があるのか?

まず、確かに、イランは核開発に利用する遠心分離機の大幅な削減などを含む計画に合意しました。ただ、完全に施設を失くすわけではなく、合意内容に従い縮小した施設でも、年1発程度の核爆弾の製造は可能なのです。

ここで、面白くないのがサウジアラビアです。イスラエルの他に、イランまでも、核施設の保有がなんだかんだで認められてしまったわけで、中東三国の中で核施設を持っていないのは自分たちだけになってしまいます。

中東の覇権を狙う以上、他の二国に差を空けられては面白くありません。

今後、サウジアラビアが核施設の保有権利を主張し始めるかもしれません。

そうなれば、さらに中東情勢が緊迫することは間違いありません。

さらに、イランへの経済制裁が解除され、再びイランに経済力が戻ることで、イランの強大化を招くことになります。

なぜ、イランの強大化が問題になるか。

イランは実は、レバノン、シリア、イエメン、イラクなど仲間の周辺諸国に存在するシーア派の武装組織に、経済的な援助を行っています。

経済制裁の解除により、イランに資金が流れ込むようになると、これらの武装組織にも、さらに援助が行われるようになり、対立するサウジアラビアや、宗派間の争いが激化する可能性があります。

今後もし、イランが中東の覇権を握り強大化し、今回の合意で決められた核開発の停止期間が満了した時、再び核開発に手を染めたら。。。

それは、世界にとって、非常に大きな脅威となるでしょう。

 

日本人も無関係ではいられない

さてさて、ここまで中東の問題について見てきましたが、

「まあ、中東で起こってることなんて、日本の俺たちにゃ関係ねー。鼻ホジー。」

と軽く考えていてはいけません。

中東での紛争が激化するということは、中東でのアメリカ軍と、武装組織との衝突の可能性も高くなるということです。

ということは、安保法案に従って、自衛隊も戦闘に参加しなければならない局面に突き当たるかもしれません。

もはや、今までのように、遠くの国の出来事だし、日本人には直接関係ないとも言っていられないのです。

 

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