【春の日に見たい】アメリカンニューシネマ5選
私は、春になると無性にアメリカンニューシネマが見たくなります。
春のポカポカした陽気のなかで、なぜ悲劇的なエンディングを迎えることの多いアメリカンニューシネマが見たくなるのか、自分でもよくわからないのですが、
梶井基次郎は
「櫻の樹の下には死体が埋まっている」
と桜の花のあまりの美しさを、見事な言葉で表現しました。
もしかすると、物語の美しさが、悲劇的なエンディングによりさらに際立つアメリカンニューシネマが、春のそれと似ているからなのかもしれません。
そこで、今日はお勧めのアメリカンニューシネマを5作品紹介します。
明日に向かって撃て
セピアがかった画面に、ノスタルジーと気品に満ちた洒脱なドラマが展開する、ニューウェイブ西部劇。
言わずと知れたアメリカンニューシネマの傑作です。僕はポール・ニューマンが大好きなのですが、ここで見せる2枚目半のポールがもしかすると一番好きかもしれません。また、「え!?ブラピ?」と見間違えるほどブラッド・ピットにうりふたつの若き日のロバート・レッドフォード。
この二人の絶妙な兼ね合いと、美しい映像、洗練された音楽、すべてが絶妙に絡み合う最高の映画です。
また、ユーモアに満ち、ニコニコして見ていられる前半から、後半に向け二人の背後に徐々に重く立ちこめる暗雲。そして衝撃のラストまで、全編を通して無駄が一切ない、まさに傑作ですね。
カッコーの巣の上で
精神病院という、非人間的管理社会の中で「人間性の解放」を主張する男、マクマーフィを通して「人間と、その存在の素晴らしさ」を訴えた衝撃的作品。
刑務所の強制労働から逃れるため、精神異常を装い精神病院に入院してきた主人公。婦長によってがんじがらめの規則が定められた病院で、主人公はルールに片っ端から反抗していく。最初は今まで通りのルールに縛られた生活を望んでいた他の患者達だが、徐々に主人公の生き方に共感するようになっていく。。。
ジャック・ニコルソンが 名優であるということに異論のある人はいないと思いますが、ここで見られるニコルソンの演技が、もしかするとベストではないでしょうか。狂人、荒くれ者、心優しき兄貴分、そして廃人。。とニコルソンの中で様々な人格が玉虫色に発光し、観るものを圧倒します。
そして、ニコルソンの演技に勝るとも劣らない、物語の素晴らしさ。
とにかく見終わった後、30分ほど放心状態でぼーっとしてしまうほどの名作っていうのは、この映画くらいではないでしょうか。
真夜中のカーボーイ
テキサスの片田舎から出て来た若者と、イタリア系青年が、ニューヨークでの生活に挫折し、傷ついていく姿を辛辣に描く「ヒーロー不在」の青春映画。
自分の男性的魅力で金持ち女を虜にして金を稼ごうと、テキサスからニューヨークへやって来たジョー。だが現実の壁は厳しく、カウボーイを気取る彼の夢は遠のいていくばかり。そんなジョーが知り合ったのがラッツォと呼ばれるイタリア系の小男ジョー。大都会のはみだし者同士、次第に友情を深めていく二人だが。。。
前作「卒業」での優等生役から一転、終始咳き込みながら、びっこを引いて歩くホームレスの小男を演じたダスティン・ホフマンと、今だとアンジェリーナ・ジョリーの実父といった方が通りがいいジョン・ボイトのコンビによるアメリカンニューシネマの代表作。
希望と自信の象徴であるカウボーイスタイルが、売春の小道具に堕ちてゆき、夢と栄光のためのフロリダ行きが『死の旅』に変じていく、悲しい物語の中で、ダスティン・ホフマンとジョン・ボイトのアクセントの効いた会話のやり取りが絶妙な中和剤となり、映画をより美しく、感動的なものとしています。
俺たちに明日はない
アメリカンニューシネマの幕開けを告げた、この作品を挙げないわけにはいかないでしょう。大恐慌時代の実在のギャング“ボニーとクライド”の短い青春を描き、それまでのハリウッド映画の常識を根底から覆した記念碑的作品。
この映画を知らない人でも『ボニー&クライド』という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。30年代のアメリカに実在した男女二人組の強盗。その壮絶な生き様を美しくも、暴力的に描き、アンチヒーローの代表として今も語り継がれる要因となった本作品。
この映画を初めて見た時の衝撃は、ピストルズやクラッシュといったパンクミュージックを初めて聞いた衝撃ととても良く似ていました。
また、エンディングの衝撃と迫力。そういえば、カッコーの巣の上でだけでなく、この映画を見終わったあとも、しばらく放心状態だったなあ(笑)
イージー・ライダー
ボーン トゥビー ワァァーーーイルド♪
あまりにもバラエティなどで使われすぎたため、この音楽を聴くと笑ってしまうという方もいるかもしれません。
でもこの映画、本当にカッコ良くて良い映画なんです。
ドラッグ、殺人、それまでのアメリカ映画が避けて来たタブーを、カウンターカルチャーの寵児、ピータ・フォンダとデニス・ホッパーが、三十五万ドルといった低予算と六週間という短い期間で、鮮烈な映像に焼き付けた、奇跡の名作。
映画の内容はもちろんですが、この映画のサントラがまた素晴らしいんですよ。
ステッペン・ウルフが歌う表題曲はもちろんのこと、ザ・バンドやバーズ、ジミヘン、ロジャー・マッギンなど、アルバム全編を通して捨て曲一切なし。夏の夕暮れなんかにドライブする時には、必ずかけたくなります。
以上、アメリカンニューシネマの名作を5作品紹介しました。
春の夜は、お家でウイスキーでも飲みながら、アメリカンニューシネマを観賞し、その刹那的な美しさを、散りゆく桜と重ね合わせてみるのもオツなものではないでしょうか。
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