社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

【派遣法改正案】厚労省課長の「モノ扱い」発言が問題に

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昨年の春に通常国会に提出されたものの、条文中に誤植が見つかり廃案。その後、誤りが修正され、秋の臨時国会に再提出されたにもかかわらず、野党の反発により審議が進まず、再び廃案となった「派遣法改正案」。

3度目の正直とばかりに、今国会に三たび提出予定の本改正案の成立が、早くも危ぶまれています。というのも厚生労働省の担当課長が派遣労働者を「モノ扱い」する発言をしたということで、法案に反対の立場を取る野党が攻撃を強めているからです。

問題となっている「モノ扱い」発言とは

労働者を「モノ扱い」するなんて、本当に最低ですね!鬼畜そのもの!プンスカ!!と抑えきれない憤りに肩を震わせながら

「ちくしょう!この鬼畜課長!いったいどんな酷い発言をしやがったんだ!」と記事に目を通しましたところ

課長は1月末、派遣業界団体の新年会で派遣労働者について

「これまで使い捨てというモノ扱いだった。ようやく人間扱いする法律になってきた」

と発言した。 

 ちくしょう!なんて酷いことを言いやがるんだ!!コノヤロ、ファッキンジャップぐらいわかるよ馬鹿野郎!!

。。。ん? あれ? これってそんなに問題になる発言?

派遣労働者の現状が酷すぎるという、単なる問題提起じゃないの?

個人的には、派遣労働者がまるでモノのように扱われているから、なんとかしなければならないという、至極まっとうな意見のような気もします。

それとも私の文章読解能力が、民主党のお偉い先生方と比べて劣っているのでしょうか。

まあ、とにかく現状の派遣法では問題が多いので、改正しなくちゃならんというのが 厚生労働省の担当課長の意見であることは間違いないですね。

では、今回の改正案で何が変わるのでしょう。わかりやすく見ていきましょう。

 

派遣法改正案のポイント

現在、特定26業種と呼ばれる専門職(エンジニア、通訳、秘書など)以外の職種において、派遣労働者を利用できる期間は最長3年とされています。

例えば、ある会社で一般事務の仕事を派遣社員に頼みたい場合、派遣社員を雇用してから3年を超えると、その事務仕事を派遣社員に行わせることはできなくなります。派遣会社から別の派遣社員を受け入れて行わせるということもできず、派遣社員を自社の正社員として雇用するか、自社の別の社員に代わりにしてもらうしかないのです。(ただし、3ヶ月間だけ派遣社員を使用しないクーリング期間を経た後であれば、再び派遣社員を利用できるというグレーゾーンの抜け道が用意されていますが。)

これが、今回の改正案では、特定26業種が廃止され、すべての業種で同一の派遣社員を雇用できる期間が最長3年となります。

その一方で、別の派遣社員を雇いさえすれば、同一職種であっても派遣を使い続けることができるようになります。つまり先述の事務仕事の場合、3年ごとに派遣会社から別の派遣社員を紹介してもらうことで、無期限で事務を派遣社員に担当してもらうことが可能になるのです。

 

一概に「悪法」とも言い切れないが。。。

さて、以上が改正案の主なポイントですが。

はて、この改正案が成立したからといって、課長が言うように、現在「モノ扱い」されている派遣労働者が「人間扱い」されることになるのでしょうか。

確かに、企業にとっては従来より派遣社員を活用しやすくなるため、派遣労働者の活用が増え、あえて派遣という自由度の高い働き方を選択している人にとってはチャンスともなるでしょう。

また、今回の改正案では、派遣会社に対して、派遣先との契約が満了した派遣労働者への新たな派遣先の紹介や、派遣先に直接雇用を求めるなどの雇用安定措置の実施の義務化も盛り込まれており、派遣社員としての立場も従来より安定するかもしれません。

しかし、今までであれば、3年間派遣として働いた後、

「君は優秀で、よく働いてくれたし、派遣法でこの仕事を別の派遣にやらせるってこともできないから、いっそうちの正社員にならないか。」

となっていたところが、改正後では

「君は優秀で、よく働いてくれたんだけど正社員にするってほどじゃないし、また別の派遣を派遣会社から紹介してもらう事にするよ。」

となり、野党が反対するように「非正規雇用の拡大・固定化につながる」懸念もあります。

今回の改正案については、良い点もあれば悪い点もあり、一概にどうということは難しいですが、企業と派遣会社にとってはメリットの大きい改正であることは間違いありません。

 

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