【資生堂ショック】資生堂の方針転換は、女性にとっての『改悪』なのか?
『資生堂ショック』というワードが話題となっている。
発端は、資生堂が育児中の女性に対する優遇措置を廃止し、通常の社員と同様のノルマやシフトを与えるよう方針転換を進めている件について、NHKのニュース内で特集されたことによる。
資生堂は国内約2万人の女性従業員を抱え、20年以上も前から育児休暇や短時間勤務制度などを取り入れ『女性に優しい会社』と言われてきた。
ところが、14年春から、1万人の美容部員に対して、育児中であっても夜間までの遅番や土日勤務に入ることや、1人あたり1日18人以上の接客ノルマを義務付けている。
この資生堂の方針転換を受けて、会社を去った美容部員もいるという。
この報道を見た一部の女性達からは
「もう資生堂の商品買うのやめよう」
といった不買運動を含む否定的な意見も多く聞かれる。
その一方
「ちゃんと内容を見てみたら、納得出来た」
「資生堂が一方的に悪いわけではない。むしろ自然な流れ」
というように、資生堂の方針に理解を示す意見も見られる。
資生堂の葛藤
では、なぜ資生堂がこのような方針転換に踏み切ったのかを、もう少しきちんと見てみよう。
資生堂では短時間勤務制度を1991年より導入したが、当初は実際に店頭に立つ美容部員はなかなか制度を利用しなかった。ところが、2007年に当時の社長が美容部員に対しても制度の利用を進めたところ、利用者は一気に増える。
ところがである。
時短制度利用者の増加とほぼ反比例して、会社全体の国内売上が減少し始めたのである。
資生堂は、時短制度を利用する従業員が増えたことで、夕方から夜にかけての書き入れ時に、顧客の対応をする美容部員が店頭にいなくなったことが売上減少の原因の一つであると考えた。
また、夕方以降の一番忙しい時間帯を、通常勤務の従業員達だけで回さなければならなくなり、通常勤務の従業員たちからは悲鳴が上がり始める。
一方、忙しい夕方に同僚に感謝の言葉もなくさっさと帰るなど、育児中の優遇制度を当然のように行使する従業員が増え、通常勤務の社員たちとの摩擦が生じ始めたという。
事態を重く見た資生堂が苦渋の決断として、方針転換に踏み切ったのは当然と言える。
資生堂の方針転換は、批判されるべきものか?
Twitterなどでは、
「通常社員にしわ寄せが行くのが問題なら、手当や人員を拡充すればいいじゃん。それもしないのはマタハラもいいとこ」
「まさに『全員で苦しもう』の典型」
などという否定意見もあるようだが、これは少し無責任な発言だろう。
企業は従業員の生活と同様に、企業の存続の為の経済活動も最優先する必要がある。
企業の安定なくして従業員達の生活の安定はない。もちろんその逆もしかりである。
資生堂が今回の方針転換で従業員達に課したノルマは、社会通念上に見ても妥当なものであり、否定されるべきものでは決してない。
もちろん、遅番や土日勤務に入りたくとも、共働きの核家庭などで、自分以外に幼い子供の面倒をみることができない。という切実な悩みを抱える女性も多いだろう。
だが、これらの批判は一億総活躍を標榜して出生率の増加を目標としながらも、圧倒的に不足している保育施設、といった問題点を多く抱えている日本の現状に向けられるべきであり、一企業が負わされるべき問題ではない。まして、資生堂は「夫や家族の協力を得るのが難しい場合はベビーシッターの補助を出す」という提案までしている。
実際に資生堂は、日経ウーマンが発表している『女性が活躍する会社ベスト100』において、昨年に引き続き2015年もベストワンに輝いており、女性リーダーの任用と人材育成の強化に積極的な企業として高く評価されているのも事実である。
本当の意味で、女性が活躍できる社会を作るという意味でも、単に子育てに専念出来る会社ではなく、子育てをしながらも女性が活躍できる『優しさと厳しさ』をもった会社へと舵を切った資生堂は、やはり『女性が活躍できる会社』として一歩先を行っているのかもしれない。
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