社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

全寺が泣いた。お布施の相場の話。

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 盆だ。

盆・トゥ・ビー・ワイルドだ。

アイ・ワズ・盆・トゥ・ラヴ・ユーだ。(もういい)

仕事も休みで、お出かけされたり、実家に帰っている方も多いのではないだろうか。

先祖の墓参りに行かれるという方も多いだろう。

 

イオンという黒船

ところで今、お葬式業界に価格破壊という名の激震が走っていることはご存知だろうか?

古くから「坊主丸儲け」という言葉があるように、お坊さんに差し出す「お布施」には決まった相場がなく、また、「お布施」という行為そのものに、この世の執着を捨てるという修行的な意味合いがあるため、多く払えばそれだけ徳がつめて良いということになっていた。

しかし、近年は意識の変化や、高齢化により、従来型の派手な葬式ではなく、簡素な葬儀でも抵抗のない人が増えて来た。

そこに目をつけたのが、イオンモールで御馴染みのイオンである。

高齢化が進み、ますます葬儀の需要は増えていく一方、お寺へのお布施など、葬儀にかかる費用は聖域化され、不透明なものが多く、利用者の困惑を招いていた。

また、葬儀というものは、なかなかじっくりと比較検討することが出来ないため、葬儀社の言い値で実施されることも多い。

じゃあ、ここを透明化し、低価格でバシッと打ち出せば、ビッグビジネスになるじゃないか!

ということで、イオンが打ち出したのが「イオンの葬儀」である。

 

 

白日にさらされたお布施額

2009年、イオンはそれまで不透明であった葬儀業界の料金体系を明確にし、圧倒的な低価格で葬儀業界に殴り込みをかける。

また翌年には、あろうことか「お布施額の目安」をホームページに掲載し、それまで曖昧であった、お布施額を白日のもとにさらすという暴挙(快挙?)にでる。

さあ、これに驚いたのがお寺である。今まで、

「お布施の額はお気持ちの問題であります。」

という、何ともこちらの痛いところをつく、殺し文句で、

「うーん、何かよくわからないけど、多く払った方がいいんだろうな。確か婆ちゃんとかは、ウン十万円払ってたし。。。じゃあ、俺も同じだけ払うか。。。」

と、貰えるところからは、それなりに貰えていたお布施が、

「あ、相場ってこうなってんだ。じゃあ、俺らもこの額を払えば問題ないか。」

と貰えるお布施額が減るのは明白であるからだ。

全日本仏教会は、「企業による宗教行為への介入」として公表の中止を要請するも、イオンはもちろん無視。

この相場表によると、簡単な火葬や、通常の法事など、一番安いので¥45,000。

家族葬や一般葬など、通常の通夜・告別式の葬儀で¥150,000となっている。

一般的な通夜・告別式のお布施額は15〜50万とも言われているので、これを相場が15万円として公表され、広く認知されることに対して、「冗談じゃない!!」とお寺が反発するのも無理はない。

 

生き残るにはブランディングが重要

ただでさえ、檀家の減少や少子高齢化、後継者不足などにより、危機に瀕しているお寺にとって、イオンを筆頭に、低価格でシンプルな新しい葬儀の形をビジネスとして発信する新興勢力は脅威以外の何者でもないだろう。

ただ、利用する私達にとっては、選択肢が広がることは正直ありがたい。

また、イオンは2013年より3万円ポッキリ、その後の追加費用なしで納骨・永代供養まで行うプランも提供しており、普通のお寺にとって、ますます頭の痛い存在になりそうである。

今後、低価格でシンプルな葬儀でOK派と、高いお布施を払ってでも、今までのお寺と長くつきあっていきたいという信心深い人の両極に、さらに分かれていくことだろう。

お寺も「とんち」力ならぬ、自寺院のブランド力を上げる「ブランディング」能力が、生き残りには重要になる。

盆・トゥ・ルーズでは、生き残れないのだ。

 

 

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