【目指せ芥川賞!】書き出し小説というジャンルを知っているか!?
ピースの又吉さんの「火花」が、芸人初の芥川賞受賞という快挙を成し遂げ、大きな話題となっている。
残念ながら僕はまだ読んでいないが、是非一度読んでみたいと思う。
さて、純文学、大衆小説など、文学には様々なジャンルがあるが、その中の一つに『書き出し小説』というのがあるのをご存知だろうか。
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』
とは、言わずと知れた川端康成の「雪国」の冒頭であるが、このように、優れた文学作品には、その冒頭の一文で、
「いったい何がはじまるんです!?」
と、読者の想像力を駆り立て、その心を一気に掴むキャッチーな書き出しで始まるものも多い。
そこで、小説の書き出しの一文だけを考えようという斬新な試みが、この『書き出し小説』なのである。
もともとは娯楽サイト「デイリーポータルZ」で投稿募集されているものだが、その優秀作品を集めた書籍も発行されている。
それが以下の『書き出し小説(天久聖一編)』である。
掲載されている文は、全て一行から二行程度の非常に短いモノであるが、いやー、想像力をバシバシ掻き立てられる名文ぞろいである。
例えば、
『彼女なら、きっと本体よりもポケットの方を欲しがるだろう。そんな人間だ』
村上春樹の小説に出て来てもおかしくない一文である。
あえて、ドラ○もんの名前は出さず、彼女の小悪魔っぷりを遺憾なく表現した名文から、コケティッシュな彼女に振り回される、平凡な大学生の物語が今にも始まりそうだ。
『いや、先生。松下くんがいなくて困ってるんじゃなく、松下くんがたくさんいるから困っているんです』
一体どうしたんだ!松下!? ある日突然、増殖をはじめた松下くんと、そこから始まる摩訶不思議な学園生活。日常の中の非日常。万城目学氏が描きそうなコメディタッチのSFに期待が膨らむ。
『台風のあと。澄みきった空と散らかった地面。その間にいる私は、どちらなのだろうか。』
まさに純文学。自らのアイデンティティを見失った主人公が、多くの人々との出会いと別れの中で、再び自分を見つめ直していくまでの感動巨編。
『そのバラバラ死体を組み合わせると、どうやっても腕が一本余る。』
ひぃぃぃ!!一見するとユーモラスにも思える一文に潜む、底なし沼のように不可解な恐怖。金田一さん出番です!!
『わかりました、俺が差し色になりましょう』スイミーはいつも洒落た言い回しをする。
こんなスイミーは嫌だ。
『総理の抱いた人形が喋りはじめた』
さあ、ゲームのはじまりです。
とまあ、その短い文章だけで、想像力が刺激され、自分の中で物語がどんどん膨らんでいくものから、思わずプスっと笑ってしまうものまで、秀逸なセンテンスで溢れている。
そこで、僕も真似をして、一つ書き出しを考えてみた。
『いつもと反対の手で拭いてみよう。駅のトイレで何故そんなことを思ったのか。そこから全てが狂いはじめた。』
はい。もちろん、ここからは何も物語が始まりませんでしたよ。。。
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