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社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

国民年金を払わず生活保護を受けろ?「炎上」狙いのトンデモ記事を読み解く

首都圏でホームレスなど生活困窮者の相談を受け付けているNPO法人『ほっとプラス』代表の藤田孝典氏による、ある記事が注目されています。

『非正規雇用の若者はもう国民年金保険料は支払うな!ー老後は生活保護を受けよう!ー』

と、いかにも「さあ、食いつけ!お前ら!」なタイトルが付けられたこの記事。

要は、非正規雇用の若者は国民年金なんか真面目に払っていたら生活できないので、保険料なんか支払わず、生活保護を受けた方がよっぽどマシだよ!ということが書かれています。

しかし、衝撃的なタイトルとはうらはらに、記事自体は理路整然としており、制度をよく理解していない若者たちであれば、

「へー。そうなんだ、じゃ国民年金なんて払わない方が良いじゃん!」

と、すんなり信じてしまうかもしれません。

そこに、この藤田さんの巧さを感じます。

おそらく、藤田さんは、社会保障制度について十分な知識がありながらも、若者を自分の思う方向にミスリードするため、わざと間違った知識を披露しているのだと思います。

 

非正規雇用は国民年金が払えない?

例えば、藤田さんは、日本の全労働者の約4割が非正規雇用であり、非正規雇用の労働者は、正社員に比べて給料が少ない。よって国民年金が支払えない。としています。

本当にそうでしょうか?

非正規雇用が正社員よりも給料が少ないというのは、確かにその通りです。

ですが、非正規雇用であっても、週30時間以上働いているのであれば、美容室など一部の個人事業のサービス業や、従業員5人未満の個人事業所を除き、厚生年金への加入が義務付けられています。

ですので、アルバイトやパートなど、週の労働時間が短い人を除けば、ほとんどの労働者が国民年金ではなく、厚生年金に加入していないとおかしいのです。厚生年金の場合、保険料は給料より天引きになりますので、保険料の未払いなどは本来発生しないはずです。

ただ実際、社会保険の適用事業所であっても、不当に加入逃れをして、自社の社員を厚生年金に加入させていない中小企業が多くあるのも事実です。

しかし、これは問題のすり替えです。

この問題に対しては、厚生年金未加入事業所への加入指導を徹底することが重要なのであり、国民年金が払えない若者に対して、「保険料なんて払うな」と助言するのは見当違いです。

また実際、この問題を重くみた厚生労働省は今年の4月より、厚生年金未加入事業所への指導を徹底して強化し始めています。

 

国民年金を滞納していると大変なことに

軽々しく若者に、国民年金の滞納を勧めることが出来ない理由は他にもあります。

厚生労働省は、国民年金滞納者への強制徴収の対象者を拡大しており、2018年度までに所得300万以上の滞納者への強制徴収を実施することを決定しています。また、この上限額は今後さらに引き下げられていくはずです。

軽い気持ちで、国民年金の未払いを続けていると、ある日突然、銀行口座の差し押さえなどが行われることになります。

また、突然のケガや病気で大きな障害を負ってしまったとき、生活の支えとなる障害年金や、万一、自分が死んでしまった場合に配偶者や子供が受給出来るはずの遺族年金も受け取れなくなりますのでご注意を。

 

積極的に免除制度を利用しましょう

しかし実際に、給料が少な過ぎて、国民年金なんて払えない!という切実な悩みを抱えている若者が多いのも事実です。

そのような場合は、躊躇なく国民年金の免除制度を利用しましょう。

免除制度は、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合など、国民年金保険料を納めることが困難な場合に、申請することで保険料の納付が免除される制度です。

しかも、この制度のすごいところは、全額免除で保険料を全く支払わなくても、国がその納めるべき保険料の半分の額を負担してくれるところです。

申請自体もとても簡単で、申請用紙に必要な情報を記入して、近くの市役所や年金事務所に郵送するだけです。

例えば自営業などの場合、経費で出て行く額が多くて、前年所得は数十万なんてことはよくありますよね。そんな場合も全額免除の申請が出来るんですよ。

免除は、国が認めた権利ですので、該当する方はどんどん利用しましょう。

 

社会保障制度のテコ入れは、確かに必要

社会保険は、世代間の相互扶助であり、誰かが未納を続ければ必ず別の誰かにしわ寄せがいきます。

しかし、藤田さんのような意見が出てくるほど、現在の社会保障制度について、若者達の不満が高まっていることは見過ごしては行けません。

選挙で勝つために、高齢者へ媚びを売り続ける政府。その一方で未来を担う若者達は将来への不安でいっぱいです。

社会保障制度の不安を取り除く為にも、高齢者医療制度の更なる見直しや、デフレ下でもマクロ経済スライドを実施するなど、痛みを伴う改革は必ず必要となってくるはずです。

また6組に1組が悩んでいると言われる不妊治療の体外受精などへの保険適用は、個人的に少子高齢化を改善していくために必須なのではないかと思っています。確かに短期的には医療費負担により国の財政が圧迫されますが、長期的にみると、子供が増えることで国の発展につながるからです。

このような社会保障制度へのテコ入れは、若者達に納得してもらう為にも絶対に避けて通ってはいけません。

 

藤田さんにしてみれば、あえて『炎上』させることで、自分の意見をなるべく沢山の人に読んでもらおうという作戦がまんまと成功したというところでしょうが、この記事に対する皆さんの反応が、

「いや、バカなこと言ってんじゃないよ!」

という意見が大半であったことに、やはり日本は捨てたもんじゃないと思いました。

 

図解 年金のしくみ(第6版): 年金制度の問題点を理解するための論点40

図解 年金のしくみ(第6版): 年金制度の問題点を理解するための論点40

 

 

 

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