お金を払えばクビにし放題?解雇の金銭解決制度をどう見るか
政府の規制改革会議は25日、労働者が解雇され裁判で無効判決が出た場合などに、職場復帰でなく金銭の支払いで決着する「解決金制度」の導入を検討すべきだとの提言をまとめました。
ネット上では早速、「金さえ払えばクビにし放題なんて、こんな制度は許せない!」と早速お決まりの反対意見が出て来ていますが、きちんと制度の内容を見てみると、決して労働者の不利になる制度ではなさそうです。
解決金制度の概要
今回の提言では、
「キミ、今月いっぱいでクビね」
「えっ!?何でですか!」
「うーん、今朝さあ、ボクちん犬のウ○コ踏んじゃったんだよね。で最悪の気分で出勤して一番最初に目に入ったのがキミだったの。」
「は?そんな理由で私はクビになるんですか!?」
「ま、そーゆーことだから、ヨロピク!」
「そんな解雇は無効に決まってるでしょ!訴えてやる!!」
かくして、クビにされた社員は訴えを起こし、判決でもちろん解雇は無効となりました。
そこで、今までなら
「解雇は無効となったけど、あんなバカ社長の元には二度と戻りたくないし。。。」
ということで、社員が職場復帰を望まない場合は、そこで泣き寝入りするか、改めて賠償請求の訴えを起こすしかなかったのですが、今回の提言では社員が職場復帰を望まない場合に
「職場復帰はしたくないから、お金ちょーだい!」
と会社に解決金の支払いを要求できるようになるのです。
新制度は労働者にとって不利な制度なのか?
社員の解雇については、労働契約法16条で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする」と定められており、ちょっと仕事が出来ないからとか、社長や上司とのソリが合わないからといった理由で簡単に解雇することはできません。
しかしながら、中小企業においては安直に社員をクビにするところが、結構普通にあるのも事実です。そういった企業でクビになった場合、いくら裁判で不当解雇と認められたところで、元の職場に戻りたいと思う方は少ないでしょう。現在ですと、職場復帰せず会社からお金を取るためには、そこから改めて賠償請求を裁判で起こさなければならないのですが、そこまでのガッツのある方は少なく、大半が泣き寝入りしているのが現状です。
一方、今回の制度が導入された場合、裁判で不当解雇と認められた時点で職場復帰を望まない場合は、すぐさま代わりに解決金を請求できるようになるのです。
ですので、今回の提言について、労働者をクビにしやすくなるというのは全く逆で、むしろ不当な解雇に対する規制強化であると言えます。
ただし、この制度導入を皮切りになし崩し的に、金さえ払えば、特に理由がなくてもクビにしてOKという制度に繋げていきたいと政府が考えているなら話は別ですが。。。
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