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社労士による時事ネタコラム

奈良の社会保険労務士事務所「よしだ経営労務管理事務所」の代表です。 このブログは、社会保険労務士および集客コンサルタントの立場から、日々のニュースで取り上げられた労働、雇用問題や法律についての解説をしたり、一般人としての立場から駄文を書いたりするコラムです。

【まるで詐欺!?】8割が解散決定。厚生年金基金とは?

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中小企業の従業員などが加入する厚生年金基金の8割が解散することになりました。

厚生労働省の調査によると、1月末に存在した471基金のうち、368基金が解散方針を決定したとのこと。

年金の受給者が増える一方、保険料を負担する現役世代が減り、存続が難しくなったことが背景にあります。

 

そもそも厚生年金基金ってなに?

まず、厚生年金基金について説明します。

国が運用する公的年金には、ざっくりと会社員の方が加入する厚生年金と、それ以外の方が加入する国民年金の二種類があることは、皆さんご存知かと思います。

厚生年金基金とは、基金が独自に事業主から預かった掛金(上乗せ部分)と、従業員の厚生年金保険料の一部(代行部分と呼ばれます)を使って運営する「企業年金」になります。

一般的なサラリーマンであれば、厚生年金に入ってさえおけば、同時に国民年金にも加入していることになりますので、老後受け取ることができる年金は、国民年金部分の「老齢基礎年金」と、厚生年金部分による「老齢厚生年金」の2階建てとなります。

さらに会社が厚生年金基金に入っていれば、その基金による年金が加算されて、3階建ての年金給付となるのです。

 

なぜ解散が相次いでいるのか?

バブルの頃までは、予定を上回る運用益を確保した基金も多くありましたが、バブル崩壊後の長引く不況と、少子高齢化による年金受給者の増加、保険料を負担する世代の減少により運営が苦しくなる基金が激増しました。

さらに2012年には、中小企業の厚生年金基金の運用を主力としていたAIJ投資顧問株式会社が、顧客に対して行っていた説明とはうらはらに、実際はその運用資産の大部分を消失させていた詐欺問題が発覚し、加盟する中小企業厚年基金の財政悪化がさらに深刻化しました。

この問題を受けて、厚年基金の新規設立は認められなくなり、さらに現存する厚年基金についても解散を促す方針が定められました。

 

まるで詐欺みたいなもんだ

本日の朝日新聞デジタルに次のような記事が載っていました。

昨年12月に届いた書類には、300万円を超える負担額が記されていた。長年加入していた栃木県石油業厚生年金基金からだった。
「何十年も掛けてきた企業年金がなくなったうえ、追加負担まであるなんて。詐欺みたいなもんだ」。栃木県で給油所を営んでいた男性(64)は憤る。

この基金は栃木県内の給油所などが集まり、社員らの厚生年金の一部(代行部分)と企業年金(上乗せ部分)を出すためにつくった。だが、積み立て不足に陥り、今年1月、ついに解散に追いこまれた。

厚生年金の代行部分は積み立て不足を加入企業が穴埋めしなければならず、男性のもとにはその負担額が通知されていた。最長30年かけて、月に1万円ほどずつ払っていくという。

男性は、多いときで数人の社員を雇って給油所を経営してきたが、エコカーの普及などでガソリンの販売が低迷した。貯蔵タンクが古くなって改修が必要になったのを機に、数年前に給油所をたたんだ。

中小企業が集まってつくる厚生年金基金は、年金保険料を納める若い社員が減る一方、年金を受けとる退職者は増えてどこも厳しい。さらにこの男性が加入していた基金は、2012年2月に発覚したAIJ投資顧問の詐欺事件で、運用のために大手信託銀行を通じてAIJに預けていた約40億円を失い、積み立て不足が拡大してしまった。

どうして、このようなことが起こってしまうのでしょう?

まず、冒頭で基金は、事業主から預かった掛金(上乗せ部分)と、従業員の厚生年金保険料の一部(代行部分)を使って運営されると説明しました。

基金が積み立て不足に陥り破綻した場合、事業主から預かった掛金はもちろんのこと、代行部分である従業員の厚生年金保険料の一部も失ったことになります。

しかし、従業員からは毎月きちんと代行部分も含めた額の保険料を徴収していたわけですから、この失われた代行部分の積み立て不足を、加入企業が負担しなければならなくなるのです。

実際、この事業主の方はAIJによる詐欺事件の被害者ですので、「詐欺みたい」というより「詐欺そのもの」なのですが、

厚年基金に限らず、国民年金や厚生年金についても、制度自体の存続に不安を抱えている若年層が多くいます。

社会保険制度自体が「国ぐるみの詐欺」との疑惑をもたれないよう、根本的な制度自体の見直しが求められているのではないでしょうか。

 

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