トヨタの英断。下請けへの値下げ要請を2期連続見送り
トヨタ自動車は、下請け企業から購入する部品について、年2回実施していた値下げ要求を2014年度下期に引き続き、2015年の上期も見送る方針を固めました。
円安などによる収益増を取引先に還元し、数万社に及ぶ取引先の賃上げを後押しする考えです。
トヨタの値下げシステムとは
トヨタの値下げシステムというのは有名で、半年に一度、下請け部品メーカとの価格交渉で、トヨタ側が値下げを求め、部品メーカもそれを受け入れることを通例とするものです。
改定額は取引先によっても異なりますが、近年は平均で1〜1.5%程度の値下げを要請しています。
トヨタ側の言い分としては、徹底した「カイゼン」により無駄を省けばコストは徐々に下げられて当然とのことですが、下請けにしてみれば、この値下げ要求が対象車種の販売中止まで続きますので、企業努力が大変なのです。
「トヨタの下請けいじめ」なんて、巷では言われたりもしています。(ただ、実際にはトヨタの経営方針は下請けとの共存共栄が大原則であり、トヨタの下請け企業はトヨタの指導により鍛えられ、業績アップしているところが多いのも事実です。)
1次下請けのデンソーも価格据え置き
トヨタの仕入れ先は、トヨタを頂点に、1次仕入れ先(約450社)、2次仕入れ先(約1万社)、3次仕入れ先(数万社)というピラミッド構造になっています。
トヨタが値下げを見送ったのと同様に、1次以降の取引先が2次、3次と価格を据え置いていけば、全国数万社の規模で利益が上積みされます。
実際に、トヨタの1次取引先であるデンソーにおいては、トヨタの値下げ要求見送りを受け、14年度下期にその下請けへの価格改定を見送った経緯があります。
同様の流れが広まり、トヨタの全ての取引先に値下げ見送りの恩恵が広がれば、多くの企業で賃上げの余裕が生まれる可能性があります。
実際の賃上げにつながるかは微妙なところも
一方、輸出が少ない中小企業においては、円安の恩恵を受けないばかりか、逆に材料費の高騰などで経営が厳しいところも多くあり、今回のトヨタの値下げ見送りが、そのまま賃上げに直結するかどうかは微妙なところでもあります。
しかしながら、今回のトヨタの「大企業の利益を中小企業に展開し、日本全体の景気を底上げしよう」とする意思については評価されるべきだと思います。
先日の、若年層への賃金を手厚くする見直しや(以下参照:トヨタが現場作業員の賃金体系見直し。若手への報酬を手厚く - 社労士による時事ネタコラム)、燃料電池車に関する特許の無償提供など、ここ最近のトヨタからはグローバル企業の名にふさわしい取り組みが垣間見えます。
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